あの光と影の世界のこと

雑記

誰にでも、子供の頃に夢中になったものがあるだろう。野球のスター選手かもしれないし、戦隊ヒーローだったかもしれない。
私の場合、それがUFOや幽霊、いわゆるオカルトと呼ばれる類のものだった。

夜になると、どこかのチャンネルで「あなたの知らない世界」だとか、「衝撃!○○映像」だとか、そんなタイトルの番組が放送されていた。
それをビデオに録画し、擦り切れるほど何度も見返した。
怖くて眠れなくなった夜もあったが、それでも私は、その世界から目を離すことができなかった。

学校ではそんな話をする友人は少なく、話しても笑われるのがオチだった。
だが、私は知っていた。笑っている連中の中にも、本当は怖い話が好きでたまらない者がいることを。
人は皆、理屈では割り切れない何かを、心のどこかで信じたがっている。

大人になっても、それは変わらなかった。

むしろ、年を重ねるにつれ、オカルトという言葉が指すものの奥行きを感じるようになった。
若い頃はただ「見たい」「知りたい」という思いで夢中になっていたが、今では、なぜ人はそんなものを語るのか、
なぜ見たと言い張るのか、その背後にある人間の心の風景に興味がある。

不思議なものだ。
UFOの話を聞くとき、人は宇宙の広さを思う。
幽霊の話を耳にするとき、人は死んだ誰かを思い出す。

つまりそれは、目に見えないものへの畏れであり、同時に、希望でもあるのだと思う。

仕事に疲れて、現実にすり減った夜などに、ふと、YouTubeで「未確認飛行物体の真相」なんて動画を見始めてしまう。
「こんなこと、くだらないよな」と言いながら、心のどこかでは、まだあの頃の少年が胸を高鳴らせているのを感じる。

それは、忘れたくても忘れられない、
ビデオの再生ボタンに指をかけていた、あの夜の感情だ。

信じるか信じないか──そんな問いは、もうどうでもいい。
ただ私は、これからもこの不可思議で、どこか懐かしい世界と、静かに付き合っていきたいと思っている。

それが、私なりの現実の逃げ方であり、同時に、現実を少しだけ愛おしく感じさせてくれる方法なのかもしれない。

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